ビビンパを “みんなで” “混ぜて” 食べます

はじめに

生卵かけごはん-どうして混ぜますか?

こういう質問をされたら、日本人のあなたはどう答えますか?「それがマナーだから」「おいしく食べられるから」と答えますか?小さいころから自然にしている行為なので、理由を問われても答えにつまるのではないでしょうか?

実は、卵が日本のように新鮮ではない国の人達にとっては、卵に火を通さず生で食べるのはかなり奇異なことです。生の卵をなぜ、ごはんにかけるのかがとても不思議に感じます。

ピビンバ- 混ぜる? 混ぜない?

さて、韓国の代表料理ピピンバ。あなたは混ぜて食べますか?混ぜないで食べますか?

多くの日本人は色とりどりにきれいに盛り付けされているナムルをそれぞれ別々に食べたく、混ぜるの?と疑問が浮かぶのではないでしょうか?

日本にある韓国料理店では、ピピンバを出す時に「混ぜてください。混ぜたほうがおいしく食べられます」と必ず一言そえるそうです。 「ピピンバは混ぜるのが韓国のマナーです」と書いている韓国料理を紹介するサイトもあります。日本人の多くが混ぜないで食べないからです。

韓国人に質問してみたらどう答えるでしょうか?

先の日本人の生たまごかけご飯のように、小さいころから自然にしているから、なぜそんな質問をするのかわからないでしょう。 マナーだから、美味しく食べられるからという意識は全くなく、混ぜないなんて想像すらできないのです。

よく知ったら混ぜて食べたくなる ビビンバ

韓国に住むと、家族、同僚、友達などとピピンバを食べる機会が多いですが、ビビンバが出てきたら韓国人は一斉に混ぜ始めます。日本人の自分ひとりだけ、混ぜないのも変なので、恐る恐る食べたり、混ぜないでいると食べ方を知らないのかと韓国人が混ぜてくれたりとだんだん混ぜて食べる機会が増えていきます。

ピピンバを韓国人と一緒に作る機会があれば、具材をそれだけでそのまま食べるナムルの時より、やや薄めに味付けしているのがわかります。混ぜた時の味が濃すぎにならず、おいしくするためです。

こうして、混ぜて食べてみて、混ぜたほうがおいしいとわかってくると、ピピンバを混ぜて食べたくなってくるのです。

たくさんのなぜ??

韓国に住んで、韓国語で話して、韓国人と交流してみると“ピピンバ 混ぜる”のように、今までの日本人の習慣、常識では考えられない行動や言葉が多くて、とまどったことがない人は、まずないのではないでしょうか?

韓国人の友人に「奥さんはどんな人?」と尋ねたら、「妻は美しい人です。私にとってはいつも美しいです」と答えました。私は素直な人とか、明るい人という答えを期待していたので、予想外の答えにびっくりして、他の友人達にもいろいろきいてみたところ、韓国人の男性は“一番美人は誰だと思うか”と質問したら、だいたいは自分の奥さんか彼女だと答えるだろうとのことでした。

これはポジティブな”とまどい”のひとつの例ですが、もちろんネガティブな”とまどい”もあります。 とまどうたびになぜなのだろうとずっと考えて暮らしてきて気づいたのが、常識、習慣、文化を作っている根本的なものが日本とは全く違うということです。

他人も家族(韓国)/ 家族も他人(日本)― 家族感

韓国では、家の中のトイレで用を足すときに鍵をかけません。それくらい家族の感情の距離が近いです。家族の延長の社会の中でも、遠慮も迷惑もルールも必要ありません。自分が歩いている時、横断歩道が赤信号でも車がいなかったら、横断歩道を渡ります。こんな韓国人を日本人には迷惑をしらない、ルールを守らない勝手な人が多いという印象をもちます。

反対に日本では、家族が他人なので、家の中でも遠慮や迷惑を意識しなければならないし、他人の延長の社会の中では、遠慮、迷惑、ルールが必要になってきます。ルールをよくまもって、横断歩道が赤信号の時に、車がいなくても渡る人はいません。韓国人からすると「遠慮」「迷惑」はよくわからない観念で、ルールをよく守っている日本人が不思議に感じます。

私が主役(韓国)/あなたが主役(日本)― 言語1

韓国語には「れる」・「られる」・「くれる」の受動態の言葉がありません。日本語で「上司に指示される」は韓国語では受け身がないので、「上司が指示する」という文章になります。

言葉自体に受動態がないから、受動的な発想は想像すらもできず、自然と能動的、主体的にならざるをえません。

あなたは何歳?(韓国)/あなたは身内(日本)?― 言語2

韓国語の敬語を使う基準は年齢・職位が自分より上かどうかです。自分の両親の話を他人にするときは、「お父様、お母様がおっしゃいました」という言い方になります。自分の会社の社長の事を他社の方と話す時も「社長様がおっしゃいましました」と敬語を使います。

日本語は自分の身内かそうでないかが基準で、身内には謙譲語を外の人には尊敬語を使いますね。「父、母が申しました」「社長が申しました」ちなみに韓国語には自分を低めて相手を高める謙譲語という感覚はありません。

韓国語は年齢、職位という絶対的な基準で、日本語は自分の内側か、外側の人なのかという周りによって左右される相対的な基準なのです。

みんなで、混ぜて(韓国)/ひとりで、分けて(日本)― 食文化

韓国で食事をとるときは、家族、友達、同僚達とみんなで一緒に食べるのがほとんどです。外でひとりで食べていると変わった人とみられてしまいます。みんなでわけてたべる小皿のおかずは各自の箸でとり、“とり箸”はありません。

一緒にひとつのお皿の食べ物をつつくので、仲良くなるし、他の人の食べている進行具合が否応なく目にはいってくるので、視野が外にむいていきます。ビビンバは違う味のものが集まって、よりおいしいひとつの味を作るという韓国人の民族性を表しているといわれています。

対して日本は各自にお皿があり、一人で食べてる人がおかしいとはみられません。ラーメン屋など一人で食べるように設計されているカウンターだけのお店もあります。みんなで分けて食べる場合は“とり箸”を使います。一人で食べているので、自分以外に目を向ける必要もなく、視野が内に、自分にむいてきます。カレーライスをカレーとライスを分けてたべるように、ほとんどのものをご飯と具を分けてたべます。韓国人はカレーライスも混ぜて食べます。

住めば韓国― 住んだら楽しい韓国&住むのにお薦め韓国

こうして、”なぜ”ととまどったものが、日本と違う韓国の家族感・言語・食文化などに由来するものだとわかってくると、その言動が理解でき、共感でき、心地よく、楽しくなってきます。最初は不便だったけれど住み慣れてくれる居心地がよくなり離れたくなるという「住めば都」ならぬ「住めば韓国」です。

また、日本と全く違った韓国人の言動のひとつひとつに驚いたり、感動したり、逆に日本人の特異性に気づいたりと、今日は何が起こるかとわくわくして、毎日が新鮮でとても楽しいです。「住んでみたら、韓国に」とお薦めしたいです。

ビビンバを “みんなで” “混ぜて” 食べます

留学・仕事・結婚などいろいろな事情のため、韓国で、韓国語で、韓国人とふれあいながら生活している日本人の中で、このような韓国と日本の根本的な違いを知らないために、葛藤している人も少なくないのでしょうか?

このサイトでは、日本と韓国の根本的な違いがわかってきて、“住んだら楽しい韓国”を見つけてきた方々のたくさんのストーリーを紹介していきます。

ビビンバを、みんなで!、混ぜて!ー分けて一人で食べていた時よりずっとおいしく食べませんか?!

(2024年8月24日 韓大納言記)

コメント

  1. サンフミ より:

    ドラマで、1人暮らししている主人公が、大きなボールに、豪快にご飯、具材入れて、かき混ぜ、大きなスプーンで頬張りながら、泣きながら食べるシーンを思い出しました。この記事を読むと、また、その深い意味がよくわかりますね。また、次の記事も楽しみにしています。

  2. マス・モーリン より:

    小さい頃は卵かけご飯を夕飯までのつなぎによく食べたものですが、最近ではあまり見かけなくなりました。
    久しぶりに卵かけご飯の記事を見てほっこりするのは、やはり日本人にとってのソウルフードなのでしょうか。
    ビビンパは韓国人にとってのソウルフードなのでしょうか?
    ビビンパは日本人にとって安心して外れなく食べられる韓国料理の1つですが、卵かけご飯とビビンパの比較、他人も家族、家族も他人という対比はとても興味深く思いました。
    ちなみにカナダの留学生に聞くと、卵かけご飯は「あんなの、人間の食べ物じゃない!」そうです。
    そんなあ〜。

    • happy-korea より:

      コメントありがとうございます。卵かけごはんのエピソードの続きです。日本の卵は賞味期限は1週間ぐらいでしょうか? 多くても10個入りで売っていますが、韓国は賞味期限は1か月ぐらいで30個入りでケースで買う人が多いです。私の友達は10個いりだと高いから買えないと言っています。それだけ、日本の卵は新鮮で、他の国で売っている卵は古いということです。自国の卵のイメージを持っている韓国人は、すき焼きに生卵をつけて食べるのはありえない―と言っています。逆に日本の卵の新鮮さ、おいしさを知ってしまった韓国人は、韓国では食べられないから、日本に行った時に卵かけごはんを食べるそうです。
      私は、韓国でどうしても卵かけごはんを食べたくなって、韓国の卵を買ってみてやってみたのですが、まさに、「人間の食べ物じゃない」で、まずくて、食べきれずに捨てました。

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